少し前に購入し一読してすぐお気に入りの一冊となったのだが、なかなか魅力を文章にし難い作品でブログに書くことができずにいた『プリンタニア・ニッポン』。
帯には「生体プリンターから出力された生き物と暮らしはじめました。」とある。
現代ではあり得ないが少し未来にはあるかもしれない?と思わせる、まさに「すこしふしぎ」な話である。
この『プリンタニア・ニッポン』、一話一話はほのぼのした日常漫画である。
かなり世界観が作り込まれていて読者側からのツッコミの余地はほぼない。一話は短いが、少しずつ謎の部分が垣間見えていくのがとてもワクワクする。
架空の世界なので世界のありようをかなり描いている。そのうえで、統制された中で反乱分子らしきものが全くないのは違和感ではあるが、今後のストーリーでそれも説明がなされるのだろうと期待している。
そして、もちもちした可愛い生物と過ごすゆるい日常漫画を読んでいるのはずなのに、いつのまにか「人間とは何か」と考えさせられる。
「より良く生きる」ということは定義づけできるのか。
点数化・数値化は本当に平等さや不平等さの指標になるのか。
生きていく上での娯楽とはなにか。仕事とはなにか。
もちろん日常パートはくすっと笑えて、そんなに深刻にならなくても読める。
プリンタニア・ニッポンは喋らないが、なんとなく考えていることは分かる。そして飼い主であり主人公の佐藤を特別だと感じているのも分かる。
佐藤のほうは、評価の為に動いたり感情にあまり惑わされない発言が目立ったりとかなり淡泊だが、「嫌い」というようなネガティブな感情にも惑わされない分フラットな優しさがある。
この作品の主人公、佐藤のクールさとプリンタニア・ニッポンのいじらしさは『動物のお医者さん』のハムテルとチョビを彷彿とさせる。
「登場人物すべて、お互いがお互いに干渉しすぎない」という理想の世界のような雰囲気も共通点と言えるだろう。
それ故に、まだまだ謎は多い『プリンタニア・ニッポン』であるが、『動物のお医者さん』が好きな人にはおすすめできる。
『動物のお医者さん』を読んだことがない人はぜひ読んでみてください。名作です。
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